SSブログ

火をいこす 熾す [日本語教育]

今年は何十年ぶりかで火鉢を出して、鉄瓶で湯をわかしたり、餅を焼いたりして楽しんだ。
楽しかったのは、種火の炭を使って、上手く火鉢の炭に火をつけることだった。種火が小さい時は炭を寄せて、フーフー息を吹きかけて火の勢いを強くする。フーフー吹いていた時「火をいこす」とか「火がいこった」という言葉を思い出した。祖母がやはりフーフーと火鉢の炭を吹いていた様子、赤く燃えていた炭の色などを思い出した。

「いこる」という言葉は辞書には載っていなかった。祖父母や両親は淡路島の生まれなのでそちらの方言かと思った。
ネットで調べると、京ことばとか、近畿中国四国の方言とある。そして、それも比較的新しい言い方だとも書いてあった。新しいと言っても明治時代以前だろう。
確かに、枕草子では「火など急ぎおこして、炭もて渡るも、いとつきづきし」とあるから、この時代は京都でも「おこす」を使っていたのだ。

しかし、炭にしっかり火が付きその赤々とした温かい色は心も温める。その状態はやはり「いこる」だなーと思ってしまう。
炭火焼きの店の名前で「IKORU」は東京に「いこる家」は関西にあった。
炭火焼きの店の名前として相応しいかもしれない。


「おこす」の漢字だが、「おこす」をパソコンの漢字で変換すると「熾す」がでてくる。新明解を見ると、「火をおこす」は「起こす」で出ていて、「熾す」も使われるとある。「熾す」はが常用漢字ではないからか。熾炭(おこしずみ)=火のおこった炭、又は火をおこす時に使う消し炭という説明もあった。上に「種火の炭」と書いたのは熾炭と書くべきだっのだ。

古語辞典では「おこ・し(起し)」の項目に「火など急ぎ起して」という例文があるので、やはり、炭に火をつける意味で「起こす(起す)」を使っていたという事だ。
また、古い漢和辞典では「熾」に「おこす」の読みはなくは「もやす」とよむとある。(意味は火をおこす)
ネットの漢和辞典には「熾す(おこす)」の読みが入っているので、いつ「おこす」の読みが入ったのだろうと思う。


個人的にはやはりひらがなで「いこす」がいいなと思っている。



********************************************
私たちは日本語を教えるかたわら、教科書作り、日本文化の紹介等の活動もしています
私たちのホームページをご覧ください。
http://www014.upp.so-net.ne.jp/nbunka/learn.htm
正hyosi.png
nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント