SSブログ

近づく 近寄る [日本語教育]


日本語総まとめ 語彙 N2 1週5日目

船を岸に近づける → サメが近づく 近寄る という言葉が出てきた。
自動詞他動詞の違いだけではないようだ。

まず「近づける」(他)人が何かをど何かに近づける
 (船長が)船を岸に近づける/(私が)目を本に近づけて読む/(彼は)外部の人を近づけない

「近づく」(自)どこか/何かに 近くなっていく
 サメがこちらに近づいてきた/船が岸に近づいていく/社長に近づく(人間関係を強くする意味もある)/卒業式の日が近づく/台風が日本に近づいてきた

「近寄る」(自)何か/どこかの近くまで行く 主語は人間か動物または意志があるように見えるもの。
 あやしい船がこちらに近寄ってくる/サメが近寄ってきた/名前を呼ぶと犬が近寄ってきた/細かい彫刻を近寄って見た/反対派の人に近寄っていく
 卒業式の日が近寄ってきた。 × 
 台風が日本に近寄ってきた。 ×
 これらは主語が意志のある物でないので×

ここで 「近寄る」と「近づく」はどう違うか気になった。「寄る」の方が距離が近いような気がする。「寄る」には「しわが寄る、寄る年波」などの様に重なる意味も含むからより近さを感じるのだろう。
サメが近づいてきたときは気を付けて! 近寄ってきたらもう危ないかもしれない。

しかし、「寄る」にはものの近くに行く場合と別の使い方がある。
「太平洋の中でハワイ島はアメリカ寄りだ」というように境界線から少し一方に寄っている意味だ。「野党よりの考え方」は少し野党に近い考え方。
「近寄る」は、そのものの近くに行くということ。
(辞書を見ると「寄る」には、まだまだいろいろな意味がある。)

学生たちには、「近寄る」は動物や人間など意志があるものに使う。「近づく」より、距離が近くなる場合が多いなどと2枚のサメの写真を使って説明しようと思う。

*****************************************
私たちは日本語を教えるかたわら、教科書作り、日本文化の紹介等の活動もしています
私たちのホームページは以下のサイトに引っ越しをしました。。
http://www.tomo2006.net/learn.htm
正hyosi.png
nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

他山の石 [日本語教育]

元法相の河井克行被告が選挙買収を認めての衆院議員辞職表明について、二階氏が「他山の石にしないといけない」と発言したことが、話題になっている。
「他山の石」は「詩経」の言葉で、「它山之石  可以攻玉」(よその山から出た粗悪な石でも。自分のもっている玉を磨く役には立つ)小人(しょうじん)の言動を反面教師として、自分の「徳」を高めるようにしなければならないというのがもとの意味。

普通はほかの人の悪い言動やほかの場所で起きた悪い事例から学んで自分の行いを正したり、組織や社会をいい方向に変えて行くという意味み合いで使われる。
また、直接かかわりのない者や遠く離れたところで起きた事例から学ぶ意で用いられる。

今回「「議論の余地のないことだから、本人も大いに反省しているだろうが、党としても他山の石としてしっかり対応していかなくてはならない」と答えたと報道された。
この「党としても他山の石として」のくだりが、同じ自民党だから他山ではないだろう。。他人事ではない自分の党だろうと突っ込まれている。

わたしも、これをニュースで聞いたとき、「えっ、変だ」と思った。しかし、自民党の内部の感覚しかない場合「あの人たちは失敗したが、党の中の他の人間は気を引き締めてしっかりやれよ。」ということになっているのかもしれない。それはそれで、わかるが国を背負う政治家としては???

*****************************************
私たちは日本語を教えるかたわら、教科書作り、日本文化の紹介等の活動もしています
私たちのホームページは以下のサイトに引っ越しをしました。。
http://www.tomo2006.net/learn.htm
正hyosi.png
nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

うべなう [日本語教育]

題名にあまりピンとくるものがなくてこの歳まで読んでなかったデュフォーとカミュの「ペスト」をこの際と思って読んだ。
当たり前の話だが、どちらも今のコロナの感染状況、社会状況と酷似している。隔離と消毒という対策もまた同じ、行政の遅れも。そして、どちらも人間のうつ対策が功を奏したというよりペストが自ずからが収束していく。感染症というものはそういうものか。「三つを避け消毒」しか、庶民のとる方法はない。

カミュの「ペスト」
オランの街が封鎖されて、絶望的になった人々の描写の中に
・・・彼らは生きているというよりもむしろ漂流しつつ、方向もない日々と、うるところのない思い出のまにまに、自らの苦痛の大地に根を下ろすことをうべなった暁のみ生気を生じうるであろうとことの、さまよえる亡霊となり果てていたのだ。・・・・
というのがあった。
「うべなう」これも意味は分かるが、使ったことがない言葉。
うべなう・・諾う 宜う 肯う が漢字として出てくる。
宜うー「同意する」「承服する」から意味を広めて 「謝罪する」「服従する」の意味もある。
諾うー承諾の意味だから、 従う、言いなりになるの意味も。
肯うー肯定する意味
ペストが蔓延するオランの街から出ていけないことをあきらめて認めることでしか生きていけないということだ。

「宜う」を調べていたら、「うべ」と「むべ」と同じ意味だとあった。
「むべなるかな」という言葉がある。「そうか!」と納得することだ。
百人一首の有名な歌も思い出した。
「吹くからに 秋の草木のしをるれば、むべ山風を嵐といふらむ」
(そうか、だから山風→嵐 なのだ。)


ペストの様にコロナもいつかは消滅するのだろう。

*****************************************
私たちは日本語を教えるかたわら、教科書作り、日本文化の紹介等の活動もしています
私たちのホームページは以下のサイトに引っ越しをしました。。
http://www.tomo2006.net/learn.htm
正hyosi.png
nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

水仙のアクセント② [日本語教育]

水仙.png朝テレビから「水仙の花が咲いている」というニュースが流れてきたとき「スイセン」のアクセントに違和感を持った。女性アナ男性アナどちらも「垂線」と同じようなアクセントだったからだ。一年前にもこのブログで取り上げていた。今回は、直接NHKにメールしてみた。「NHKアクセント辞典とも、違っているけれど今はこういうアクセントになっているのでしょうか」という内容だ。

二日後に丁寧なお返事が来てびっくりした。その内容にも。 
アクセントも年々変わっていくんだ! 

今回、全文引用させていただきました。

「いつもNHKの放送をご視聴くださいましてありがとうございます。
「水仙」のアクセントについてのお問い合わせですが、3月13日朝のニュースを確認したところアナウンサーは「ス\イセン」(\は下がるところ)と伝えていました。
結論から申し上げますと「水仙」のアクセントは「スイセン ̄」「ス\イセン」の両方を認めています。
以前は「スイセン ̄」と平らに読むアクセントしか認めていませんでしたが、このことばは以前から揺れ動いていて、東京でも「ス\イセン」と頭を高く発音する人が数多くいました。
放送で使うアクセントについてはNHK放送文化研究所発行の「NHK日本語発音アクセント辞典」を参考にしていますが、「水仙」は2016年5月発行の新版から「ス\イセン」と頭を高くするアクセントも認めています。この時の改定ではこれ以外にも「熊」も「クマ ̄」だけでなく「ク\マ」も認めています。変化が著しいのは形容詞で「明るい」「浅い」「甘い」「冷たい」などは、これまで平板のアクセントしかありませんでしたが今回「アカル\イ」「ツメタ\イ」のように中高のアクセントも認めるようになりました。
アクセントは時代の中で動いていきます。多くは使い慣れてくると平らな方向に進むのですが、最近は若い人を中心に頭を高くする発音も増えてきています。「支援」「採決」「予算」といったことばは以前は平らなアクセントしかなかったのですが、現在はアクセント辞典でも両方認めるようになってきています。
時代の中で変化していくことばをアナウンサーは率先して変化に乗るのではなく、少し後ろのスタンスで、見ている多くの方に違和感のない表現を考えていくようにしたいと思っております。
今後とも、NHKの放送に対して、ご理解とご支援を賜りますようお願い申しあげます。」

そして、更に追伸で
「お問い合わせの件についてですが、お送りさせていただきました回答文中の「熊」のアクセント記号について、誤りがありましたので、改めてご連絡いたします。
■「熊」も「クマ ̄」だけでなく「ク\マ」も認めています。(修正前)
■「熊」も「クマ\」だけでなくも認めています。(修正後)」
とあった。

そういえば、子供のころ聞いた熊の発音は 明るく「クマ ̄」とか、可愛く「ク\マ」さん ではなく、こわそうな「クマ\」であった!

アクセント一つとして侮れない。真摯に答えてくれたNHKに感謝。

*****************************************
私たちは日本語を教えるかたわら、教科書作り、日本文化の紹介等の活動もしています
私たちのホームページは以下のサイトに引っ越しをしました。。
http://www.tomo2006.net/learn.htm
正hyosi.png
nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

虹霓 こうげい [日本語教育]

昨夕不思議な虹が出たと、横浜の友達がLINEを送ってきた。普通の虹の外側に薄いもう一つの虹が出ている写真だ。
夕方すごい雷雨が長時間続いてやんだ。その後に、こんなプレゼントがあったなんて。東の空にもしかしたら見えていたのかもしれない。惜しいことをした。
虹.png
ネットで調べると、「虹霓 こうげい」というものだった。雨上がりには空気中の水分が多く、その中で太陽光が屈折分散して虹ができる。水玉の中で二回屈折したものが副虹で、虹の上にうすく表れる。色の順番は普通の虹と逆の順番になっている。これを虹霓と呼ぶのだそうだ。見たことがあるような気もするが、珍しい風景?の一つとスルーしていたかもしれない。
虹を龍と見立て、虹はオスの龍、霓をメスの龍とする。二つ合わせて虹の事を「虹霓」ともいうらしいが、現在の中国語では「彩虹」といっている。
霓裳羽衣(げいしょう-うい)天女が着るような薄く軽いスカート状の女性の着物という言葉もあり、うっすらひろがる虹の様子ぴったりだ。

この漢字知らなかったなーと思っていたが、ネット検索していてびっくりした。アニメや音楽の世界で普通に使われていた! NoisyCellの「虹霓」、虹霓剣・・・・・etc
そういえば今はやりの「鬼滅の刃」でも、難しい漢字がたくさん出てくる。PCやスマホでは手書きをしなくてもいいので、漢字へのハードルが下がったという話を聞くが、全くその通り。



*****************************************
私たちは日本語を教えるかたわら、教科書作り、日本文化の紹介等の活動もしています
私たちのホームページは以下のサイトに引っ越しをしました。。
http://www.tomo2006.net/learn.htm
正hyosi.png
nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:学問

~すると [日本語教育]

日本語総まとめN2 8週5日目
この本の説明は簡潔なのだが、ちょっと気説明が必要になることも多い。

今回は「すると」について
・・・本文・・・
① <a (きっかけ) すると b(起こったこと)>
1 薬を塗った。すると痛みが治まった。
2 窓を開けた。すると、蛾が入ってきた。
② <a すると b(a から判断した内容)>
「私は外出していました。」
「すると、家には誰もいなかったんですね。」
・・・本文終わり・・・

① の方は 初級で勉強する「ボタンを押すとドアが開いた」のような使い方だ。
1 の方はきっかけと 起こったことの間にはっきりした関係がある。
2 の方は 前半はきっかけだが、後の状況がたまたま起きたことだ。
 この二つを分けて説明してある説明もあるが、分けて教えなくてもいいと思う。何かが起きて続いて次のことが起きたという<継起関係>を表す例文を作って、後半を作文させたりして練習すればいいと思った。
 「大きな音がした。すると電気が消えて部屋が真っ暗になった。」
 「薬を飲んだ。すると、眠くなってきた。」等。

② の方の「すると」は、そうすると・・そうであるなら・・前半部分から判断するとの意味になる。
これは、今教えている学生たちにとっては、たぶん慣れていない使い方だろうが、会話で使われることが多いと思うので、これも、後半部分を作文させて慣れてもらおうと思った。
・ 「台風が東京に近づいてきた。」
「すると、これから風雨がもっと強くなるね。」
・ 「部屋のドアにも窓にもカギがかかっていました。」
「すると、誰も中に入れなかったということですね。」
・「テストの勉強をあまりしませんでした。」
「すると、結果はあまりよくないかもしれませんね。」


さて、同じ5日目の「なお」と「さて」明日の授業で質問が出るような気がするので、もし出たら、まとめてみたい。


*****************************************
私たちは日本語を教えるかたわら、教科書作り、日本文化の紹介等の活動もしています
私たちのホームページは以下のサイトに引っ越しをしました。。
http://www.tomo2006.net/learn.htm
正hyosi.png
nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:学問