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雪中送炭  [日本語教育]

今回の中国の新型肺炎の流行に際して、中国・武漢市(湖北省)へ送られた民間チャーター機の往路で、日本政府は中国政府への緊急援助物資(マスク約1万5千枚や手袋5万組、防護眼鏡や防護服など)を運んだ。昨年はエボラ出血熱が流行するコンゴ民主共和国へ防護服を支援するなど、日本政府は感染症の流行に見舞われた地域への緊急援助を続けている。

このニュースは中国内で中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」で広く拡散されているそうだ。そこで「雪中送炭」という四字熟語が使われているという。意味は「つらいときに本当に必要な物を送ってくれること」とあった。
意味は漢字なのでよくわかる、雪が降って寒くて困っている人に炭を送る、なるほど。
でも、今まで聞いたことがない四字熟語だったので、調べてみた。新明解には、やはり載っていない。広辞苑では「雪中行軍」と雪中四友(せっちゅうしゆう)・玉梅(梅)・臘梅 (ろうばい) ・茶梅(さざんか)・水仙の4種の花の事・が出ていたが、「雪中送炭」はなかった。

漢和辞典を調べると「雪中送炭=困っている人に援助の手を差しのべること」が出ていた。雪の中にいる人に炭を送って暖かくしてあげるということから来ている。
日本語に対応する言葉がないかというブログで「「渡りに船(を得る)」であるとか、「干天の慈雨」「闇夜に提灯」「地獄に仏」などが、困っている時に、運よく援助の手が差し伸べられる状況を表現する成句などが挙げられていたが、どうもぴんと来ない。

「敵に塩を送る」これは戦国時代兵糧攻めにあっていた宿敵武田信玄に、敵同士であった上杉謙信が塩を送った話から対立している相手に情けをかける意味だから、中国と日本で使うことは問題がでるだろう。
「困ったときはお互い様」「相見互い」と言う言葉かなあ。
二階幹事長が「お互いに日常の活動で友情を交わしている国に何かがあれば、隣の家が火災に見舞われたとか、急病で困っているとか、そういう時に助けに行くという気持ちと同じです」と述べたそうだが、そんな気持ちかもしれない。

昔の教え子たちとWeChatで連絡を取ってみたが、武漢ではないせいか、休みが延長されたし外出もしたくないので家の中でのんびり過ごしているというメールが多かった。いずれにしても、この新型肺炎早く収まってほしい。

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無憂華(むゆうげ) [日本語教育]

1930年10月9日無憂華=東亜キネマ京都撮影所で作られた映画、大正3美人の一人とたたえられた九条武子さんを描いた映画「無憂華」を見る会(国立映画アーカイブの映写室)に出席できることになった。

九条武子さんは、浄土真宗本願寺派の大谷家に生まれた。仏教が東に伝わった経路の解明等のためでシルクロード探検をしたことで有名な大谷光瑞の妹で、九条家に嫁いだ。結婚生活には恵まれなかったが、仏教をもとにした女子教育や奉仕活動をし、歌人、書家、画家としてもたくさんの作品を残した。築地本願寺内に住んでいたが、1923年関東大震災で被災、その後、全壊した築地本願寺の再建、震災による負傷者・孤児の救援活動などに奔走し、その無理がたたったか4年後に42歳で病死した。死後に、九條武子夫人そっくりさんコンテストが行われるほどの人気だったという。その優勝者は、伝記映画「無憂華」(1930年 東亜キネマ)に武子夫人役で主演したそうだ。この映画は武子夫人が死の少し前に出版した本「無憂華」をもとにしている。
当時の理想的な女性とされた九条武子さんがどのように描かれているのか楽しみだ。

「無憂華」は「むゆうげ」または「むうげ」と読む。新明解には載っていなかった。広辞苑には「むゆうげ」とひくと「むうげ」と書いてあり、「むうげ」の方に「無憂樹」の花と説明があった。釈尊の聖母摩耶夫人が出産のため成果に帰る途中、ルンビニー園の菩提樹の下で釈尊を生んだとあった。この説明は違うと思う。無憂樹と菩提樹は別物だ。

仏教には3つの聖樹があるという。生誕の時の無憂樹・悟りを開いたときの印度菩提樹・亡くなった時の沙羅双樹だという話を聞いたことがある。しかし、無憂樹がどんな花か意識してこなかった。今回ネットで探してみると無憂華としてhttps://takimotobukkodo.co.jp/column/仏教の三大聖樹 このページに行き当たった。
九条武子さんは、どんな気持ちでこの本の題をつけたのだろう。これについても映画会が楽しみだ。
ムユウジュ100305a-l.jpg

無憂華拡大写真(http://shokubutsu-zukan.net/blogs/kyohana/2013/03/post-4180.html










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上手になれますように、上手になりますように [日本語教育]

日本語講師になったばかりの方から質問が来た。
学生の前で、仕事が忙しいことをぼやいたら、ある学生から「忙しいのはいいことです。教えるのが上手になれるんじゃないですか」といわれたそうだ。
この方は「上手になれるんじゃないですか」という言葉に引っかって「上手になるんじゃないですか」が正しいのではないかという質問。

なかなか難しい問題だと思った。同僚と話しても意見が分かれた。
上手になれる には 違和感を覚える人もいれば、おかしくないという人も。
私は神様にお願いするような時に「上手になりますように」ではなく「上手になれますように」と言うと思う。

おかしいという意見の人は
上手になるは無意志動詞だから、可能形と組み合わせるのはおかしいという。
  雪が降れる×  
でも「気づく」は無意志動詞だけれと、「努力しても間違いに気づけなかった」という場合もあるので、
同様に「努力して努力してやっと上手になれた」は言えるような気もする。

子供と遊ぶと元気になれる、やさしくなれる
この方法できれいになれる
これらも、使っている人が多い用法だと思った。

色々考えていたら、同僚がこれに関係があるすごいブログを見つけたと教えてくれた。
http://blog.livedoor.jp/s_izuha/archives/2004862.html
ここでは「なる」は「意志動詞と無意志動詞の境界」にあるといっている。
<現在の努力」の伴った、将来の結果」を表す場合の「なる」が意志動詞>
という風に説明していた。

こどもは年数がたてば自然に大人になるが、世界一のアスリートになるには、幸運、人の助けそして努力がいる。
この将来の結果への努力を意識して考えた時「上手になれる」という言い方ができるのではないかということだ。

このブログを紹介しつつ、質問者へ返信した。


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寝巻起き巻き [日本語教育]

日経のコラムに「寝巻起き巻き」という言葉が載っていた。この言葉は自分では使ったことがない。しかし、昔、夫の妹が子連れで泊まりに来た時、「起き巻き寝巻」といいながら、子供にパジャマでなく、Tシャツとスエットパンツのようなものを着せていたことを思い出した。「起き」と「寝」の位置が違うが、どちらにしても、寝る時専用のパジャマでなく、普段着として家の中でも着られるようなものをいうものらしい。「寝巻起き巻きよそ行き巻き」といういいかたまであるとネットに載っていた。これは、そのまま、ちょっと外にまで出てしまうということだ。

そういえば、寝巻(ねまき)という言い方も今あまりしなくなった。パジャマ又は寝間着(ねまき・ねまぎ)と使うことが多い。
「寝巻」の巻くは巻き付ける、つまり着物を体に巻き付けることから来ている。昔の寝間着は着物の形をしていたので、寝巻がぴったりだが、パジャマのような服型のものには合わない。そうなると、寝間=ベッドルームできる衣服だから寝間着(発音は「ねまき」でも「ねまぎ」でもいいらしい)がしっくりくる。

巻きつながりで、掻巻(かいまき)という綿入れの着物のような形の布団の事も思い出した。夫の転勤で仙台へ言った時泊まった宿で布団の下にかけるようになっていて肩が暖かく、さすが東北と感じた。着物のように着て帯を締めて、ガウンのように着ることもできるそうだ。掻巻の「掻」は襟元を掻き合わせて巻き付けるという意味だろう。
今回調べてみてわかったのだが、仙台の宿では布団の一種のように見えたが、綿入れの着物「丹前」と同じものを意味するようだ。「丹前」は関東では「褞袍(どてら)」と呼ばれるとも書いてあった。丹前、褞袍、どちらも私が幼いころ、家の中でよく使われていた言葉だ。今回やっと掻巻と結びついた。

掻巻の「掻く」は今回辞書でしらべると、「(頭、あぐら、汗、イビキ、裏、寝首)を掻く」といろいろ使われる面白い言葉だ。そもそも、掻は搔の略字
また、後で調べてみたい。


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誠信交隣 [日本語教育]

春休みに対馬に行こうと思って色々調べている。列車やバスで行けない離島はちょっと思い切らないと行くようにならない。去年から最近の日韓関係の悪化で観光客が減ったというニュースが流れていたのでこの機会に行った方がいいかなと思った。

日本より韓国に近いところに位置している島、防人の時代から国境の警備にあたってきたこと、大陸と日本の文化や技術の交流の最前線でもあったこと、江戸時代には韓国と日本の外交を対馬藩が任され両国のはざまで苦心したことなどは一応知っていた。昨年末のNHKハイビジョンで「朝鮮通信使」で雨森芳州という人の事をやっていた。雨森芳州は江戸時代中期の儒者。対馬藩に仕えて李氏朝鮮との通好実務にも携わった。この人は日韓交流をにも尽力したという。「誠信交隣」という言葉を残し、これは誠意と信義をもって隣国と交流しようという意味らしい。今の日韓関係は「誠信交隣」と程遠い状態が続いている。日本に日本語を勉強に来る韓国人の学生の数もひところより減少、私が勤めている学校ではこのところずっと0だ。昔の学生でも、国へ帰った学生とは、ほぼ音信不通になってしまった。
ユネスコの「世界記憶遺産」に、江戸時代の朝鮮王朝が派遣した外交使節「朝鮮通信使」に関する日韓の資料の登録が認められたそうだが、それを再現する対馬の日韓交流イベント「朝鮮通信使行列」に釜山市から寄港予定だった通信使の復元木造船の参加が中止になったというニュースを見た。

ネットで調べると東洋経済日報の記事によると「90年5月、盧泰愚大統領(当時)の日本訪問時、宮中晩餐会で、「雨森芳洲は、誠意と信義の交際を信条としたと伝えられます。彼の相手役であった朝鮮の玄徳潤は、東莱に誠信堂を建てて日本の使節をもてなしました」(東洋経済日報の記事)とある。しかし、韓国でも日本でもこの考え方が重んじられているとは言えない。

対馬では雨森芳洲の足跡を見てこようと思っている。

今週から授業が始まる。ちょっと休みが長すぎて、頭を戻すのに大変かも。


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 [日本語教育]

私のお茶の先生は、毎年「歌会始」のお題をデザインした色紙をみんなにくれる。
今年は「望」
inCollage_20200104_234306025.jpg文字の形大がきく変遷した字の一つだそうだ。この字は殷周時代の金文をもとにデザインしたそうだ。
今の字で分解して読むと亡と月とと王 望みとか希望に関係のないような字が組み合わさっている

一番古い甲骨文字では人が「人が背伸びをしている形」の上に「臣=目の形」が載っている字、背伸びをして遠くを望むという意味になるらしい。
それにまず月の字が入って月を待っている意味が入り、発音を表す「亡」という字が入る(亡びるという意味は含まれない)
それで「望」には「期待する」「希望」などの意味ができたそうだ。

面白いので白川静の「常用字解」「漢字の世界」などで調べてみた。
望はもともと戦いに臨んで運気を見ることを言ったそうだ。甲骨文字の臣の字は古代,目に傷をつけて視力を奪い神に仕える臣とされた人を
表す文字、目は見えなくとも運気をみる能力があるのだろう。

「望」の下の「王」の字はもともと、右の図のような字「テイ」
tei.jpg
甲骨文字では「土、土の台」の上に人が立っている様子を示している。高いところに立って遠くを望み見るという意味がある。
現在では「壬」「王」に変化している場合が多い。
IMEには登録されていないので、手書き入力ができなかった。Unicode(U+2123C  ck統合漢字拡張B に入っている)
ワードには表示できたが、このブログにも表示できなかった。


「テイ」と似ている「壬(ジン)」はもともと「工」工具の形から来ていて真ん中が太くなっているので「壬」の字形になるそうだ。強い力に耐えられる工具の意味から「任せる、仕事」などの意味になる。似ているが「テイ」とはでき方が違う。
しかし、今は上に書いた通り、「テイ」は「壬」や「王」の字に変えて使われているようだ。

漢字は面白い!


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